った。しかし、もう私室には入らなかった。※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]が三、四回もそういったので、やっと一回入った。
 嫂は平生阿英に新婦は美しくないから※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]の気に入らないといった。阿英は朝早く起きて姜《きょう》の髪を結い、細く白粉《おしろい》をつけてやった。※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]が入っていくと姜は数倍美しさを増していた。こんなことを三日位やっているうちに、姜は美人になった。嫂はそれを不思議がった。そこで嫂はいった。
「私に子供がないから、妾を一人おかそうと思うのですが、金がないからそのままになっているのです。家の婢でも佳い女にすることができるのでしょうか。」
 阿英はいった。
「どんな人でもできるのです。ただ質の佳い人なら、ぞうさなしにできるのです。」
 とうとう婢の中から一人の色の黒い醜い女をよりだして、それを傍へ喚んで一緒に体を洗い、それに濃い白粉と薬の粉とを交えた物を塗ってやったが、三日すると顔の色がだんだん黄ろくなり、また数日すると光沢が出て来てそれが皮肌にしみとおって、もう立派な美人になった。
 甘の家で
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