つた。そして、『何《ど》ういふ積りかな。』と首を傾《かし》げて考へる風《ふう》をした。
葉書を持つてゐた福富は、この時『日附は昨日の午前六時にしてありますが、昨日の午前六時なら恰度|此村《ここ》から立つて行つた時間ぢやありませんか。そして消印《スタンプ》は今朝の五時から七時迄としてありますよ。矢張今朝○○を立つ時書いたんでせうね。』と言つた。
すると此木田が突然《いきなり》大きい声をして笑ひ出した。
『甲田さんも随分|好事《ものずき》な事をする人ですなあ。乞食してゐて五十銭も貰つたら、俺だつて歩くのが可厭《いや》になりますよ。第一、今時《いまどき》は大抵の奴あ英語の少し位|噛《かじ》つてるから、中学生だか何だか、知れたもんぢやないぢやありませんか。』
この言葉は、甚《ひど》く甲田の心を害した。たとへ対手が何にしろ、旅をして困つてる者へ金を呉れるのが何が好事《ものずき》なものかと思つたが、ただ苦笑ひをして見せた。甲田は此時もう、一昨日金を呉れた時の自分の心持は忘れてゐた。対手が困つてるから呉れたのだと許り信じてゐた。
『いや、中学生には中学生でせう。真箇《ほんと》の乞食なら、嘘にし
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