病院の窓
石川啄木

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)平日《いつも》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五六十枚|攫《つか》んで

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「麾」の「毛」に代えて「公の右上の欠けたもの」、第4水準2−94−57]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ひそ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 野村良吉は平日《いつも》より少し早目に外交から帰つた。二月の中旬過《なかばすぎ》の、珍らしく寒さの緩んだ日で、街々の雪がザクザク融けかかつて来たから、指先に穴のあいた足袋が気持悪く濡れて居た。事務室に入つて、受付の広田に聞くと、同じ外勤の上島《うはしま》も長野も未だ帰つて来ないと云ふ。時計は一時十六分を示して居た。
 暫時《しばらく》其処の暖炉《ストーブ》にあたつて、濡れた足袋を赤くなつて燃えて居る暖炉《ストーブ》に自暴《やけ》に擦《こす》り付けると、シユッシユッと
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