漂泊
石川啄木
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)立待崎《たちまちさき》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)何|憚《はばか》らず
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「二点しんにょう+施のつくり」、第3水準1−92−52]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ピリ/\と
−−
一
曇ツた日だ。
立待崎《たちまちさき》から汐首《しほくび》の岬《みさき》まで、諸手《もろて》を拡げて海を抱いた七里の砂浜には、荒々しい磯の香りが、何|憚《はばか》らず北国《ほくこく》の強い空気に漲ツて居る。空一面に渋い顔を開いて、遙かに遙かに地球の表面《おもて》を圧して居る灰色の雲の下には、圧せられてたまるものかと云はぬ許りに、劫初《ごふしよ》の儘《まま》の碧海《あをうみ》が、底知れぬ胸の動揺《ゆるぎ》の浪をあげて居る。右も左も見る限り、塩を含んだ荒砂は、冷たい浪の洗ふに委せて、此処は拾ふべき貝殻のあ
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