に思ふ長病《ながやまひ》かな。
ボロオヂンといふ露西亜名《ロシアな》が、
何故《なぜ》ともなく、
幾度も思ひ出さるる日なり。
いつとなく我にあゆみ寄り、
手を握り、
またいつとなく去りゆく人人《ひとびと》!
友も妻もかなしと思ふらし――
病《や》みても猶《なほ》、
革命のこと口に絶《た》たねば。
やや遠きものに思ひし
テロリストの悲しき心も――
近づく日のあり。
かかる目に
すでに幾度《いくたび》会へることぞ!
成《な》るがままに成れと今は思ふなり。
月に三十円もあれば、田舎《ゐなか》にては、
楽に暮せると――
ひょっと思へる。
今日もまた胸に痛みあり。
死ぬならば、
ふるさとに行《ゆ》きて死なむと思ふ。
いつしかに夏となれりけり。
やみあがりの目にこころよき
雨の明るさ!
病《や》みて四月《しぐわつ》――
そのときどきに変りたる
くすりの味もなつかしきかな。
病みて四月《ぐわつ》――
その間《ま》にも、猶《なほ》、目に見えて、
わが子の背丈《せたけ》のびしかなしみ。
すこやかに、
背丈《せたけ》のびゆく子を見つつ、
われの日毎《ひ
前へ
次へ
全17ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
石川 啄木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング