思議相にお定を見てゐた。
奥様は、源助を送り出すと、其儘手づから洋燈を持つて、家の中の部屋々々をお定に案内して呉れたのであつた。玄関の障子を開けると三畳、横に六畳間、奥が此八畳間、其奥にも一つ六畳間があつて主人夫婦の寝室《ねま》になつてゐる。台所の横は、お定の室と名指された四畳の細長い室で、二階の八畳は主人の書斎。
さて、奥様は、真白な左の腕を見せて、長火鉢の縁に臂を突き乍ら、お定のために明日からの日課となるべき事を細々《こまごま》と説くのであつた。何処の戸を一番先に開けて、何処の室の掃除は朝飯過で可いか。来客のある時の取次の仕方から、下駄靴の揃へ様、御用聞に来る小僧等への応対の仕方まで、艶のない声に諄々《じゆんじゆん》と喋り続けるのであるが、お定には僅かに要領だけ聞きとれたに過ぎぬ。
其処へ旦那様がお帰りになると、奥様は座を譲つて、反対の側の、先刻《さつき》まで源助の坐つた座蒲団に移つたが、
『貴郎《あなた》、今日《こんち》は大層遅かつたぢやございませんか?』
『ああ、今日は重役の鈴木ン許《とこ》に廻つたもんだからな。(と言つてお定の顔を見てゐたが)これか、今度の女中は?』
『
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