》とお手紙にも其※[#「麾」の「毛」に代えて「公の右上の欠けたもの」、第4水準2−94−57]《そんな》事があつたつて、新太郎が言つてましたがね。お前さん達、まあ遠い所をよくお出になつたことねえ。真《ほんと》に。』
『何卒《どうか》ハア……』と、二人は血を吐く思で漸く言つて、穏《おとな》しく頭を下げた。
『それにな、今度七日遊んでるうち、此方《こつち》の此お八重さんといふ人の家に厄介になつて来たんだよ。』
『おや然《さ》う。まあ甚※[#「麾」の「毛」に代えて「公の右上の欠けたもの」、第4水準2−94−57]《どんな》にか宅《うち》ぢや御世話様になりましたか。真《ほんと》に遠い所をよく入来《いらし》つた。まあ/\お二人共自分の家へ来た積りで、緩《ゆつく》り見物でもなさいましよ。』
お定は此時、些《ちつ》とも気が付かずに何もお土産を持つて来なかつたことを思つて、一人胸を痛めた。
お吉は小作りなキリリとした顔立の女で、二人の田舎娘には見た事もない程立居振舞が敏捷《すばしこ》い。黒繻子《くろじゆす》の半襟をかけた唐桟《たうざん》の袷を着てゐた。
二人は、それから名前や年齢やをお吉に訊かれ
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