は人形の樣に其處に坐つた。お八重が叩頭《おじぎ》をしたので、お定も遲れじと眞似《まね》をした。源助は、
『お吉や、この娘さん達はな、そら俺がよく話した南部の村の、以前|非常《えら》い事世話になつた家の娘さん達でな。今度是非東京へ出て一二年奉公して見たいといふので、一緒に出て來た次第だがね。これは俺の嚊ですよ。』と二人を見る。
『まあ然《さ》うですか。些《ちよつ》とお手紙にも其※[#「麻かんむり/「公」の「八」の右を取る」、第4水準2−94−57]《そんな》事があつたつて、新太郎が言つてましたがね。お前さん達、まあ遠い所をよくお出になつたことねえ。眞《ほんと》に。』
『何卒《どうか》ハア……』と、二人は血を吐く思で漸く言つて、温《おとな》しく頭を下げた。
『それにな、今度七日遊んでるうち、此方の此お八重さんといふ人の家に厄介になつて來たんだよ。』
『おや然う。まあ甚※[#「麻かんむり/「公」の「八」の右を取る」、第4水準2−94−57]《どんな》にか宅ぢや御世話樣になりましたか、眞《ほん》に遠い所をよく入來《いらつしや》つた。まあ/\お二人共自分の家へ來た積りで、緩《ゆつく》り見物でもな
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