は。』
『厭なら一人お帰りなさい。』
『ねえ、何うしませう? あれ、あんなにお星様が見えるやうになつたぢやありませんか。』
『そんなに狼狽《うろた》へなくても可いぢやありませんか、急に?』
『ええ。………ですけれども、何だか変ぢやありませんか?………………………………………………………………………。』
『ははは。………あれあ滑稽でしたね。』………………………………………………………………………。
『あの老人《としより》が…………………………………………と思ふと、僕は耐らなくなつたから便所へ逃げたんですよ。』
『ええ。先生がお立ちになつたら、皆変な顔をしましたわ。』
『だつて可笑いぢやありませんか。あの女の人も一緒になつて憤慨するんだと、まだ面白かつた。』
『可哀相よ、あの方は。………………………………………………………………………………………。………真個《ほんと》に私あのお話を聞いてゐて、恐《こは》くなつたことよ。』
『何が?』
『だつてさうぢやありませんか?……………………………………………………………………………………。あの方のは噂だけかも知れないけれども、噂を立てられるだけでも厭
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