も色々ありますね。先《せん》のお婆さんは却々《なかなか》笑はない人でしたよ。』
『先のお婆さんとは?』
『貴方の前の女先生ですよ。』
『まあ、可哀相に。まだ二十五だつたつてぢやありませんか?』
『独身の二十五ならお婆さんぢやありませんか?』
『独身だつて………。そんなら女は皆結婚しなければならないものでせうか?』
『二十五でお婆さんと言はれたくなければね。』
『随分ね、先生は。』
『さうぢやありませんか?』
『先の方とは、先生はお親しくなすつたでせうね?』
『始終《しよつちゆう》怒られてゐたんですよ。』
『嘘ばつかし。大層真面目な方だつたさうですね?』
『ええ。時々僕が飛んでもない事を言つたり、子供らしい真似をして見せるもんだから、其の度怒られましたよ。それが又面白いもんですからね。』
『………飛んでもない事つて何んな事を仰しやつたんです?』
『女は皆――の性質を持つてるつて真個《ほんと》ですかつと言つたら、貴方とはこれから口を利かないつて言はれましたよ。』
『まあ、随分|酷《ひど》いわ。………誰だつて怒るぢやありませんか、そんな事を言はれたら。』
『さうですかね。』
『怒るぢやありま
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