て、『濟まなかつたわ清子樣、眞箇《ほんと》に私……今迄知らなかつたんですもの。』と言うなり、清子の膝に泣伏した。
『何も其樣に!』と清子も泣聲で言つて、そして二人は相抱いて暫く泣いた。
『詰らないわね、女なんて!』と、稍あつて靜子はしみじみ言ふ。
『眞箇《ほんと》ねえ』と清子は應じた。
二人の親しみは増した。
九月が來た。
信吾の不意に發《た》つて以來、富江は長い手紙を三四度東京に送つた。が、葉書一本の返事すらない。そして富江は不相變《あひかはらず》何時でも噪《はしや》いでゐる。
肺を病んだ五尺足らずの山内は、到頭八月の末に盛岡に歸つて了つた。聞けば智惠子吉野と同じ病院に入つたといふ。
濱野の家――智惠子の宿では、祖母の病が惡くもならず癒《よ》くもならぬ。
お利代は一生懸命裁縫に勵んでゐる。時には智惠子から習つた讃美歌を、小聲で小供らに歌つて聞かしてる事もある。村では好からぬ噂を立てた。それはお利代も智惠子に感化《かぶ》れて、耶蘇信者になつたので、早く祖母の死ぬ事を毎晩神に祈つてゐるといふので。――そして、祖母の死ぬのを待つて凾館の先の夫の許へ行くのだ、と傳へられた。
快
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