く頭を亂した。何故那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]事をいつたらう? 莫迦な、もう智惠子の顏を見ることが出來なくなつた! と彼は悔いた。何故もつと早く、――吉野の來ないうちに言はなかつたらう※[#疑問符感嘆符、1−8−77]
『畜生奴! 到頭白状させてやつた。』恁《か》う彼は口に出して言つて見た。が、矢張り彼は女から享けた拒絶の耻辱を、全く打消すことが出來なかつた。よし彼女を免職させる樣にしてやらうか! 否、それよりは何うかして吉野を追拂はう!
彼の心は荒れに荒れた。町端れから舟綱橋まで、國道を七八町滅茶苦茶に歩いて、そして、恐ろしい復讐を企てながら歸るともなく歸つて來た。が、彼は人に顏を見られたくない。町端れから又引返して、今度は舊國道を門前寺村の方へ辿つた。
月が昇つた。
途斷れ/\に、町へ來る近村の男女に會つた。彼は然しそれに氣がつかぬ。何時しか彼は吉野との友情を思ひ出してゐた。
『何有《なあに》! 知らん顏をしてゐればそれで濟む。豈夫智惠子が言ひは爲《し》まい。』と彼は少し落着いて來た。
『然し。』と彼は又しても吉野が憎くなる
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