消えかゝつた樺火を取卷いて四五人の小兒等がゐた。
『梅ちやん! 梅ちやん!』と妹共が先ず驅け寄る。其後から靜子は、『梅ちやん、先生は?』と優しく言ひながら近づいた。
 靜子は直ぐ氣が附いた。梅ちやんの着てゐる紺絣の單衣は、それは嘗て智惠子の平常着であつた!
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あな我が君のなつかしさよ、
     まみゆる日ぞまたるる。
君は谷の百合、峰のさくら、
     うつし世にたぐひもなし。
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 家の下からは幽かに讃美歌の聲が洩れる。信吾は居ない! 恁《か》う吉野は思つた。
『先生! 先生!』と梅ちやんは門口から呼ぶ。

      三

 智惠子に訊《き》くと、信吾は一時間許り前に歸つたといふ。
『まア何處へ行つたんでせうねえ。夕方までに歸つて、私達と一緒に又出かける筈でしたのよ。これから何處へ行くとも言はなかつたんでせうか?』
『否《いえ》、何んとも、別に。』と言つて、智惠子は意味ありげに、目で吉野を仰いで、そして俯向《うつむ》いた。
『歩いてゐたら逢ふでせうよ。』と吉野は鷹揚に言つた。
『怎《ど》うです。日向さんも被行《いらつしや》いませんか、
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