張り聞きたいんでせう?』
『聞きたいこともないが……然し其奴ア珍聞だ。』
『珍聞?』と、また勝誇つた眼附をして、『貴方も餘程頓馬ね!』
『怎《ど》うして?』
『怎うしてだと! ホヽヽヽ。』と、持つてゐる書で信吾の膝を突く。
『それより神山さん、誰が其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》事言つたんですか?』
『確かな所から。』
『然し面白いなア。ハッハハ。眞箇《ほんと》だつたら實に面白い。可し/\、一つ吉野に揶揄《からか》つてやらう。』と一人|態《わざ》と面白さうに言ふ。
『其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》に面白くつて?』
『面白いさ。宛然《まるで》小説だ!』
『然《さ》うね。この話は誰より一番信吾さんに面白いの。ね、然《さ》うでせう?』
『それはまた、怎《ど》うした譯です?』
『ね、然《さ》うでせう? 然うでせう?』
と、男を壓迫《おしつけ》る樣に言つて探る樣な眼を異樣に輝かした。そして、彈機《ばね》でも外れた樣に、[#「樣に、」は底本では「樣に」]
『ホホヽヽ。』と笑つた。

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