利でもある樣に感じてゐる。「吉野を歸して了ふ工夫はないだらうか!」恁※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《こんな》考へまでも時として信吾を惱ました。
そして又、靜子の吉野に對する素振《そぶり》も、信吾の目に快くはなかつた。總じて年頃の兄が年頃の妹の男に親しまうとするのを見るのは、樂しいものではない。平生戀といふものに自由な信條を抱いてる男でも、其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》場合には屹度自分の心の矛盾を發見する。
『戸籍上は兎も角、靜子はもう未亡人ぢやないか!』
信吾の頭には恁※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《こんな》皮肉さへも宿つてゐる。これと際立つところはないが靜子が吉野の事といへば何より大事にしてゐる、それが唯癪に障る。理由もなく不愉快に見える――。
『まア、起きてらつしつたんですか!』と、富江は開け放した縁側に立つた。
『貴女《あなた》でしたか!』
『オヤ、別の人を待つてゐたの?』
『ハッハハ。不相變《あひかはらず》不減口《へらず
前へ
次へ
全201ページ中154ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
石川 啄木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング