ンチックが殘つてるんですね。畢竟夢が殘つてるんですね。』
『は!』
『夢を見る暇も無い都會の烈しい戰爭の中で、間斷《ひつきり》なしの壓迫と刺戟を享けながら、切迫塞《せつぱつま》つた孤獨の感を抱いてゐる時ほど、自分の存在の意識の強い事はありませんね。それア苦しいですよ。苦しいけれど、矢張り新しい生活は其烈しい戰爭の中で營まれるんですね。……が、です、田舍へ來ると違ひます。田舍にはロマンチックが殘つてます。夢が殘つてます、叙情詩《リリック》が殘つてます。先刻も一人歩いてゐて然《さ》う思つたんですが、この靜かな廣い天地に自分は孤獨だ! と感じてもですね、それが何だか恁《か》う、嬉しい樣な氣がするんです。切迫塞つた苦しい、意識を刺戟する感じでなくて、餘裕のある、叙情的《リリカル》な調子《トーン》のある……畢竟周圍の空氣がロマンチックだから、矢張り夢の樣な感じですね。……僕は苦しくつて堪らなくなると何時でも田舍に逃げ出すんです。今度も然《さ》うです、畢竟、僕自身にもまだロマンチックが澤山殘つてます。自分の藝術から言へば出來るだけそれを排斥しなきや不可《いけな》い。然しそれが出來ない! 抽象的に言
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