氣がついた。

      二

 加藤の玄關を出た智惠子は、無意識に足が學校の方へ向つた。莫迦に胸騷ぎがする。
「何故|那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《あんな》に狼狽《うろた》へたらう?」恁う自分で自分に問うて見た。
「何故那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]に狼狽《うろた》へたらう? 吉野さんが被來《いらしつ》てゐたとて! 何が怖かつたらう! 清子さんも可笑しいと思つたであらう! 何故那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]に狼狽《うろたへ》たらう? 何も譯が無いぢやないか!」
 理由は無い。
 智惠子は一歩毎に顏が益々上氣して來る樣に感じた。何がなしに、吉野と昌作が後ろから急ぎ足で追驅けて來る樣な氣がする。それが、一歩々々に近づいて來る……
 其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]事は無い、と自分で譴《たしな》めて見る、何時しか息遣ひが忙しくなつてゐる。
 取留めもなく氣がそはついてるうちに歩くともなくもう
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