貴様らの知つた事か。』
 そして、乱暴に静子を蹴る、静子は又ドタリと倒れて、先よりも高くワツと泣く。
『何だ?』と言ひ乍ら父の信之も入つて来た。『何だ? 夜更《よふけ》まで歩いて来て信吾は又何を其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》に騒ぐのだ?』
『糞ツ。』と云ひさま、信吾は再静子を蹴る。
『何をするツ、此莫迦!』と、昌作は信吾に飛びつく。志郎も兄の胸を抑へる。
『何をするツ、貴様らこそ。』と、信吾はモウ夢中に咆《たけ》り立つて、突然《いきなり》志郎と昌作を薙倒《なぎたふ》す。
『コラツ。』と父も声を励して、信吾の肩を攫《つか》んだ。『何莫迦をするのだ! 静は那方《あつち》へ行け!』
『糞ツ。』と許り、信吾は其手を払つて手負猪《ておひじし》の様な勢ひで昌作に組みつく。
『貴様、何故俺を抑へた※[#疑問符感嘆符、1−8−77]』
『兄様!』
『信吾ツ!』
 ドタバタと騒ぐ其音を聞いて、別室の媒介者《なかうど》も離室《はなれ》の吉野も馳けつけた。帯せぬ寝巻の前を押へて母のお柳も来る。
『畜生! 畜生!』と、信吾は無暗矢鱈に昌作を擲つた。

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