に輝かした。そして、弾機《ばね》でも脱れた様に、
『ホホヽヽ。』と笑つた。
『ハハヽヽ。』と、信吾も為方《しかた》なしに笑つて、『実に詭弁家だな神山|様《さん》は!』
『詭弁家? 怎うせ然うよ、今の話も私が拵へたんだから!』
『否《いや》、其意味ぢやないんですよ。誰です、それを言つたのは?』
 其顔を嘲る様に眤と見て、『矢張気に懸るわね、信吾|様《さん》!』
『莫迦な!』と言つたが、女に自分の心を探られてゐるといふ不快が信吾の脳《なう》を掠めた。『それより奈何《どう》です、その吉野の方へ行つてみませんか?』
『行きませう。』
 信吾はツト立つて縁側に出ると、
『吉野君。』
と大きく呼んだ。
『何だ?』と落着いた返事。
『昼寝してたんぢやないのか! 今神山さんが来たが、其方《そつち》へ行つても可《い》いか?』
『来たまへ。』
『行きませう。』と富江を促して、信吾は先に立つ。富江は何か急に考へる事でも出来た様な顔をして、黙つてその後に跟《つ》いた。縁側伝ひ、蔭《かげ》つた庭の植込に蜩《ひぐらし》が鳴き出した。

     (十)の四

 今年の春の巴里のサロンの画譜を披《ひら》いて、吉野は
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