せて、『マア小説みたいなもんでサ。』
『みたいなナンテ……確乎《しつかり》教へたつて好いぢやありませんか? 私は読めるんぢやなし……。』
『それが読めたら面白いですよ。』と、信吾はニヤ/\笑つてゐる。
『日向|様《さん》の真似をして私も英語をやりませうか?』と言つて、富江は皮肉に笑つてる眼で男を仰いだ。
 そして直ぐ何か思出した様に声を落して、『然う/\、信吾さん、面白い話がありますよ。』
『甚※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《どんな》?』
『マアお顔を洗つてらつしやいな。』

     (十)の三

 顔を洗つて来た信吾は、気も爽々《さつぱり》した様《やう》で、ニヤ/\笑ひながら座についた。
『アラ、貴方のお髯は洗つても落ちませんね。』
『戯談《じやうだん》ぢやない。それより何です、面白い話といふのは?』
『詰らない事ですよ。』
『其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》に自重《もた》せなくても可いぢやないですか?』
『其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−9
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