親友《なかよし》で、相共に陸軍に志し試験も幸ひと同時に及第して士官学校に入つた。一日《ついたち》から二十日間の休暇を一週間許り仙台に遊んで、確《しか》とした前知らせもなく帰つて来たのだ。
 或日、母のお柳は志郎を呼んで、それとなく松原中尉の噂を聞いてみた。その返事は少からずお柳を驚かせた。
『松原の政治か! 彼奴《あいつ》ア駄目だよ、阿母様《おつかさん》、狷介なんかも兄貴に絶交して遣らうなんて言つてゐた。』
『奈何《どう》してだい、それはまた?』
『奈何してツて、那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《あんな》馬鹿はない。それや評判が悪いよ、此年《ことし》の春だつけかナア、下宿してゐた素人屋の娘を孕ませて大騒ぎを行《や》つたんだよ、友人なんか仲に入つて百五十円とか手切金を遣つたさうだ。那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]奴ア吾々軍人の顔汚《つらよご》しだ。』
 お柳は猶その話を詳しく訊いた上で、その事は当分静子にも誰にも言ふなと口留した。
 志郎は淡白《きさく》な軍人|気質《かたぎ》、信吾を除いては誰
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