そしたら、(結婚といふものは恋愛によつて初めて成立するもので、他から圧制的に結びつけようとするのは間違だ。)なんて、それあ真面目よ。すると祖母さんが(ああ/\然うだらうともさ。)が可笑しいぢやありませんか。圧制的なんて祖母さんに解るもんですかねえ。ホホヽヽヽ。』
『そして奈何《どう》した?』
『奈何もしやしないけど、面白かつたわ。そして折角祖父さん許《ばつか》り攻撃してるのよ。旧時代の思想だの何のツてね……お父さんやお母《つか》さんの事は言へないもんだから。』
『フム、然うか。……それで奈何する気なんだらう、今後。』
『南米に行きたいんですツて。』
『南米に? そんな事で学校も廃《よ》したんだな。』
『許りぢやないわ。今年卒業するのでしたのを落第したんですもの。』
『中学も卒業せずに南米に行つたつて奈何なるもんか。それに旅費だつて大分|費《かか》る。』
『全体《みんな》で二百円あれア可《いい》んですツて。』
『何処から出す積《つもり》だらう。家ぢや出せまいし……。』
『出せないことは無いと思ふわ。』
『だつて余り無謀な計画だ。』
『…………ですけど、お母《つか》さんも少し酷《ひど》いわ
前へ
次へ
全217ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
石川 啄木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング