し言葉が断れた。螢が飛ぶ。小供らも二人の態《さま》を見て、我先にと裾を捲つて水に入つた。
相対した彼岸《かなた》の崕《がけ》には、数知れぬ螢がパーツと光る。川の面が一面に燐でも燃える様に輝く。
『アレツ!』『アレツ、新坊|様《さん》が!』と魂消《たまぎ》つた叫声《さけび》が女児《こども》らと智恵子の口から迸《ほとば》しつた。五歳《いつつ》の新坊が足を浚《さら》はれて、呀《あつ》といふ間もなく流れる。と見た吉野は、突然《いきなり》手を挙げて智恵子の自ら救はんとするを制した。
『大丈夫!』
唯|一言《ひとこと》、手早く尻をからげてザブ/\と流れる小供の後を追ふ。小供は刻々|中流《おき》へ出る、間隔は三間許りもあらう。水は吉野の足に絡《からま》る。川原に上つた小供らは声を限りに泣騒いだ。
(九)の五
川底の石は滑かに、流は迅《はや》い。岸の智恵子が俄《には》かの驚きに女児《こども》らの泣騒ぐも構はずハラ/\してる間《うち》に、吉野は危き足を踏しめて十二三間も夜川の瀬を追駆《おつか》けた。波がザブ/\と腰を洗つた。
螢の光と星の影、処々に波頭の蒼白く翻へる間を、新坊はヅブ
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