葬列
石川啄木

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)嘗《かつ》て

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)時々|土地《ところ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符三つ、36−上−12]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ポタリ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 久し振で帰つて見ると、嘗《かつ》ては『眠れる都会』などと時々|土地《ところ》の新聞に罵られた盛岡も、五年以前とは余程その趣を変へて居る。先づ驚かれたのは、昔自分の寄寓して居た姉の家の、今裕福らしい魚屋の店と変つて、恰度自分の机を置いた辺《あたり》と思はれるところへ、吊された大章魚《おほだこ》の足の、極めてダラシなく垂れて居る事である。昨日二度、今朝一度、都合三度此家の前を通つた自分は、三度共此大章魚の首縊《くびくくり》を見た。若しこれが昔であつたなら、恁《こ》う何日も売れないで居ると、屹度《きつと》、自分が平家物語か
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