した、)俺にも余程《よつぽと》天理教の有難え事が解つて来た様だな。耶蘇は西洋、仏様は天竺、皆《みんな》渡来物《わたりもの》だが、天理様は日本で出来た神様だなツす?』
『左様さ。兎角自国のもんでないと悪いでな。加之《それに》何なのぢや、それ、国常立尊《くにとこたちのみこと》、国狭槌尊《くにのさづちのみこと》、豊斟渟尊《とよくむぬのみこと》、大苫辺尊《おほとまべのみこと》、面足尊《おもだるのみこと》、惶根尊《かしこねのみこと》、伊弉諾尊《いざなぎのみこと》、伊弉冊尊《いざなみのみこと》、それから大日霊尊《おほひるめのみこと》、月夜見尊《つきよみのみこと》、この十柱《とはしら》の神様はな、何れも皆立派な美徳を具へた神様達ぢやが、わが天理王の命と申すは、何と有難い事でな、この十柱の神様の美徳を悉皆《しつかい》具へて御座る。』
『成程。それで何かな、先生、お前様《めえさま》は一人でも此村に信者が出来ると、何処へも行かねえて言つたけが、真箇《ほんと》かな? それ聞かねえと意外《とんだ》ブマ見るだ。』
『真箇ともさ。』
『真箇かな?』
『真箇ともさ。』
『愈々真箇かな?』
『ハテ、奈何して嘘なもんか
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