性急な思想
石川啄木
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)性急《せっかち》にした。
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)これ位|性急《せっかち》な
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)第一歩[#「第一歩」に白丸傍点]
−−
一
最近数年間の文壇及び思想界の動乱は、それにたずさわった多くの人々の心を、著るしく性急《せっかち》にした。意地の悪い言い方をすれば、今日新聞や雑誌の上でよく見受ける「近代的」という言葉の意味は、「性急《せっかち》なる」という事に過ぎないとも言える。同じ見方から、「我々近代人は」というのを「我々性急《せっかち》な者共は」と解した方がその人の言わんとするところの内容を比較的正確にかつ容易に享入《うけい》れ得る場合が少くない。
人は、自分が従来服従し来《きた》ったところのものに対して或る反抗を起さねばならぬような境地(と私は言いたい。理窟《りくつ》は凡《すべ》て後から生れる者である)に立到り、そしてその反抗を起した場合に、その反抗が自分の反省(実際的には生活の改善)の第一歩[#
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