石川啄木詩集
石川啄木
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)雅典《アデン》
※[#]:外字の説明
(例)黒※[#「樞」の「木」に換えて「さんずい」]裡
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啄木鳥
いにしへ聖者が雅典《アデン》の森に撞《つ》きし、
光ぞ絶えせぬみ空の『愛の火』もて
鋳《い》にたる巨鐘《おほがね》、無窮《むきゆう》のその声をぞ
染めなす『緑』よ、げにこそ霊の住家。
聞け、今、巷に喘《あへ》げる塵《ちり》の疾風《はやち》
よせ来て、若やぐ生命《いのち》の森の精の
聖《きよ》きを攻むやと、終日《ひねもす》、啄木鳥《きつつきどり》、
巡りて警告《いましめ》夏樹《なつき》の髄《ずゐ》にきざむ。
往《ゆ》きしは三千年《みちとせ》、永劫猶《えいごふなほ》すすみて
つきざる『時』の箭《や》、無象の白羽の跡
追ひ行く不滅の教よ。――プラトオ、汝《なんじ》が
浄きを高きを天路の栄《はえ》と云ひし
霊をぞ守りて、この森不断の糧《かて》、
奇《くし》かるつとめを小さき鳥のすなる。
隠沼
夕影しづかに番《つがひ》の白鷺《しらさぎ》下り、
槇《まき》の葉枯《か》れたる樹下《こした
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