らで、丸飯の包を兩手に捧げて入口の方を拜んだとまでは知つてますが、アトは無宙《むちう》で驅け出したです。……人生は何處までも慘苦です。僕は天野君から眞の弟の樣にされて居たのが、自分一生涯の唯一度の幸福だと思ふのです。』
語り來つて石本は、痩せた手の甲に涙を拭《ぬぐ》つて悲氣《かなしげ》に自分を見た。自分もホッと息を吐《つ》いて涙を拭つた。女教師は卓子《テーブル》に打伏して居る。
底本:「石川啄木作品集 第二巻」昭和出版社
1970(昭和45)年11月20日発行
※底本の疑問点の確認にあたっては、「啄木全集 第三巻 小説」筑摩書房、1967(昭和42)年7月30日初版第1刷発行を参照しました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:Nana ohbe
校正:松永正敏
2003年3月20日作成
2005年11月12日修正
青空文庫作成ファイル:
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