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石川啄木
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)見《め》つかりました
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四十一|留《ルーブル》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]
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ヴオルガ河岸のサラトフといふ處で、汽船アレクサンダア二世號が出帆しようとしてゐた時の事だ。客は恐ろしく込んでゐた。一二等の切符はすつかり賣切れて了つて、三等室にも林檎一つ落とす程の隙が無く、客は皆重なり合ふやうにして坐つた。汽笛の鳴つてからであつたが、船の副長があわたゞしく三等客の中を推し分けて來て、今しがた金を盜まれたと言つて訴へた一人の百姓の傍に立つた。
『ああ旦那、金はもう見《め》つかりましただあよ。』と彼は言つた。
『何處に有つた?』
『其處にゐる軍人の外套《まんと》からだに。私いさうだんべと思つて探したら、慥かにはあ四十一|留《ルーブル》と二十|哥《コペエク》ありましただあ。』言ひながら百姓は、分捕品
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