い》るるてふ
わがために
なやめる魂《たま》をしづめよと
讃美歌うたふ人ありしかな
あはれかの男のごときたましひよ
今は何処《いづこ》に
何を思ふや
わが庭の白き躑躅《つつじ》を
薄月《うすづき》の夜《よ》に
折《を》りゆきしことな忘れそ
わが村に
初めてイエス・クリストの道を説《と》きたる
若き女かな
霧ふかき好摩《かうま》の原《はら》の
停車場の
朝の虫こそすずろなりけれ
汽車の窓
はるかに北にふるさとの山見え来《く》れば
襟《えり》を正《ただ》すも
ふるさとの土をわが踏めば
何がなしに足|軽《かろ》くなり
心|重《おも》れり
ふるさとに入《い》りて先《ま》づ心|傷《いた》むかな
道広くなり
橋もあたらし
見もしらぬ女教師《をんなけうし》が
そのかみの
わが学舎《まなびや》の窓に立てるかな
かの家《いへ》のかの窓にこそ
春の夜《よ》を
秀子《ひでこ》とともに蛙《かはづ》聴《き》きけれ
そのかみの神童《しんどう》の名の
かなしさよ
ふるさとに来て泣くはそのこと
ふるさとの停車場路《ていしやばみち》の
川ばたの
胡桃《くるみ》の下に小石|拾《ひろ》へり
ふるさ
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