れ
小心《せうしん》の役場の書記の
気の狂《ふ》れし噂《うはさ》に立てる
ふるさとの秋
わが従兄《いとこ》
野山の猟《かり》に飽《あ》きし後《のち》
酒のみ家《いへ》売り病《や》みて死にしかな
我ゆきて手をとれば
泣きてしづまりき
酔《ゑ》ひて荒《あば》れしそのかみの友
酒のめば
刀《かたな》をぬきて妻を逐《お》ふ教師《けうし》もありき
村を遂《お》はれき
年ごとに肺病《はいびやう》やみの殖《ふ》えてゆく
村に迎へし
若き医者かな
ほたる狩《がり》
川にゆかむといふ我を
山路《やまぢ》にさそふ人にてありき
馬鈴薯《ばれいしよ》のうす紫の花に降《ふ》る
雨を思へり
都《みやこ》の雨に
あはれ我がノスタルジヤは
金《きん》のごと
心に照れり清くしみらに
友として遊ぶものなき
性悪《しやうわる》の巡査の子等《こら》も
あはれなりけり
閑古鳥《かんこどり》
鳴く日となれば起《おこ》るてふ
友のやまひのいかになりけむ
わが思ふこと
おほかたは正《ただ》しかり
ふるさとのたより着《つ》ける朝《あした》は
今日聞けば
かの幸《さち》うすきやもめ人《びと》
きたなき恋に身を入《
前へ
次へ
全48ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
石川 啄木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング