ネかを、ぶらぶら散歩に出かけました。ふと見ると、途ばたのしだれ柳の下に雨蛙が一匹いて、枝に飛びつこうとしています。幾度か飛んで、幾度か落ちしている末、とうとう骨折のかいがあって、枝に縋りつきました、それを見た道風はすっかり感心しました。
「何事も努力だな。あの蛙がわしにそれを教えてくれたのだ。」
と思った彼は、家に帰ってから夜を日についで、みっちり勉強を重ねました。やがて書道のえらい大家になったという話なのでした。
「何でもその道風とやらは、公卿《くげ》の次男坊だそうだから、お冠でも着ていたかも知れない。そんな男の記憶はないかしら。」
「ある。ある。やっと思い出した。ずっと以前にそんな男に出あったことがあったっけ。」雨蛙はだしぬけに大きな声で叫びました。「だが、話が少しほんとうのことと違っているようだ。おれは何も道風とやらに教えようと思って、そんなに骨を折っていたわけじゃないよ。」
「これ。そんなに大きな声を……」
 蝸牛は慌てて眼でとめました。そして声をひそめて、この頃世間の噂によると、人間は雨蛙が道風を感化して、すぐれた書家をつくり上げた手柄を記念するために、今度銅像を建てようと目
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