モりかえりました。
「世間ってのは、人間の仲間をひっくるめていう名前なんだよ。」黒外套の哲学者は、今更そんな講釈をするのは退屈至極だといわないばかりに大きなあくびをしました。
「人間を活《い》かすも殺すも、この世間の思わく一つによることなんだが、もともと人間って奴が妙な生れつきでね。多勢集まると、一人でいる時よりも品が落ちて、とかく愚《ばか》になりやすいんだ。だからお前達のようなもののしたことをも大袈裟に吹聴して、うっかり評判を立てるようなことにもなるんさ。」
「じゃ、その世間とやらを引き入れて、そいつに背《せな》を向けさせたらどうなんだ。」癇癪持の蜜蜂は、やけになって喚《わめ》きました。「どんな高慢ちきの画かきだって、ちっとは困るだろうて。」
「それが出来たら困るかも知れん。また困らぬかも知れん。なぜといって、人間の腹の中にはそれぞれ虫が潜《もぐ》っていて、こいつの頭《かぶり》のふりよう一つで、平気で世間を相手に気儘気随をおっ通したがる病《やまい》があるんだから。そうだ。まあ、病《やまい》だろうね。尤もそんな折には誰でもが極って持ち出したがる文句があるんだよ。
――今はわからないん
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