Aとても生きては帰れないんだぞ。」
「じゃ、どうすればいいんだ。復讐《しかえし》もしないで黙って待っていろというのか。」
蜜蜂は腹立たしくて溜らないように叫びました。頭の触角と羽とが小刻みにぶるぶると顫えました。
「復讐《しかえし》は簡単だよ。これから人間の画かきどもが何を描こうとも、おれ達はわざと気づかないふりをして外《そ》っ方《ぽう》を向いているんだ。そうすれば、おれ達がいくらそそっかしいにしたって、以前のように騙かされようがないじゃないか。騙かされさえしなかったら、どんな高慢な画かきにしても、手前味噌の盛りようがないんだからな。」
「大きにそうかも知れんて。じゃ、そうと決めようじゃないか。」
「よかろう。忘れても人間に洩らすんじゃないよ。」
「これでやっと復讐《しかえし》が出来ようというもんだ。」
皆は吾を忘れて悦び合っていました。すると、だしぬけに程近い草のなかから、
「へっ、復讐かい。それが。おめでたく出来てるな。」
と冷笑する声が聞えました。
皆はびっくりして声のした方へ眼をやりました。日あたりのいい草の上で、今まで昼寝をしていたらしい一匹の黒猫が、起き上りざま背を円
前へ
次へ
全242ページ中228ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
薄田 泣菫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング