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「おれは娘っ子のようにおっ魂消たな。――恥しいことじゃ。」
政宗はその次の瞬間そう思って悔しさに身悶えした。突嗟の場合器の値段を思い浮べて、胸をどきつかせたのが何としても堪えられなく厭だった。
いつだったか、政宗は徳川家康に茶の饗応《ふるまい》を受けたことがあった。そのおり家康は湯を汲み出そうとして何心なく釜の蓋へ手をやった。蓋は火のように熱していた。あまりの熱さに家康は小児のように、
「おう、熱う……」
と叫んで、釜の蓋を取り離したかと思うと、慌ててその手を自分の耳朶へやった。その様子がいかにも可笑しかったので、政宗は覚えず
「うふ……」
と吹き出してしまった。
家康はそれを聞くと、また気をとり直して、前よりは熱していたらしい釜の蓋を平気で撮み上げた。そして何事もなかったように静かに茶を立てにかかった。
政宗はいつに変らぬ亭主のねばり強さに感心させられたが、それでも腹のなかではもしか俺だったら、初めに手にとり上げたが最後、どんなに熱くたって釜の蓋を取り落すような事はしまいと思った。
政宗は今それを思い出した。あんなに心上りしたことを考えていたものが、今の有様はどうだ
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