_恩《おかげ》は小さくとも、大よろこびでお礼を申上げますと、次にいただけますものは、もっと大きうございます。」
「そこに多少の虚偽が含まれてはいないでしょうか。」
「多少の虚偽はあっても構いません。おかげを喜ぶ度合が強くさえありましたら、嘘から真実が生れ、二二が五ともなれば、七ともなるのでございますよ。」
B夫人はこう言って、ふと窓越しに外へ眼をやったが、糸瓜棚にだらりとぶら下った長糸瓜を見ると、思わず声を高めた。
「まあ、長い糸瓜ですこと。たんとおかげをいただいてますのね……。」
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落梅の音
今年は梅雨前には、雨がひっきりなく降り続いたが、肝腎の梅雨に入ってからは毎日の好天気で、自分の住まっている近くの水田なども水不足で、田植が延びがちになり、宵ごとに聞く蛙の声も何となく力がなかったが、六月も末になってから雨は降り出した。
初めはしとしとと降り出した雨が、やがて底を抜いたような土砂降りとなり、それが二日も三日も四日も五日も、どうかすると九日も十日も降り続くと、天地は雨の光と影と響とに圧倒されて、草も、木も、鳥も、獣も、野も、山も、また人間も、まるで小さな
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