。」と言うと、スマイリイは蛙なら自分が捕って来るとあって、カナリヤ籠をその男に預けて、沼地へ下りて行きました。
暫くすると、スマイリイは蛙を一匹つかまえて帰って来ました。二人は足場を揃えて二匹の蛙を置きました。そして合図の掛声と同時に、自分達の蛙の尻に一寸さわりました。新参の蛙は勢いよく飛びましたが、スマイリイが自慢の蛙は、フランス人のように鯱子張って、一足も踏出そうとしません。まるで鍛冶屋の鉄砧のようだったと言います。お蔭で男は賭けた金で懐を膨らませて帰りました。
スマイリイは悄気きって、その後で自分の蛙の首筋をもって持ち上げました。蛙はその大きな口から小鳥撃ちの散弾を掌面に一杯ほど吐き出しました。この散弾こそ、スマイリイが沼地へ下りて行った留守の間に、旅の男が蛙をつかまえて、茶匙に二杯ほど無理強いに飲み込ませたものでした。
背広服のポケットのように、大切な下っ腹を物入れに使われたのは、蛙にとって全くみじめでした。それにしてもマアク・トエンという人は、本当に碌でなしの、飛んでもない悪戯を思い付く男ですね。
蛙はスマイリイが自慢の奴のように、丹精して仕込みさえすれば、いろんな
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