三重吉樣

          三四〇
 明治三十九年四月十五日 午前十一時―十二時 本郷區駒込千駄木町五十七番地より廣島市江波村築島内鈴木三重吉へ
 拜啓二三日前君に手紙を出すと同時に虚子に手紙を出して名作が出來たと知らせてやつたら大將今日來て千鳥を朗讀した。そこで虚子大人の意見なるものを御參考の爲めに一寸申し上げる
○全篇を通じて會話が振つて居らん。藤さんのホヽヽヽが多過ぎる藤さんが田舍言葉で瀬川さんが田舍言葉で掛合をしたらもつと活動するかも知れん(※[#「漱」の「欠」に代えて「攵」、309−15][#「※」に「原」の注記]石曰く虚子の云ふ所一理あり。然し主人公が田舍言葉でやつつけたら下女や何かの田舍言葉が引き立つまい。但し全篇を通じて若い男女の會話はあまり上出來にあらずと思ふ)
○虚子曰く章坊の寫眞や電話は嶄新ならずもつと活動が欲しい(※[#「漱」の「欠」に代えて「攵」、310−1]石曰く章坊の寫眞も電話も寫生的に面白く出來て居る)
○女と男が池の處へしやがんで對話する所未だ室に入らず。且つ其景色が陳腐なり(※[#「漱」の「欠」が「攵」、310−3]石曰く會話はあの位で
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