の人は勉強すると今に大學の教師として僕抔よりも遙かに適任者にない[#「い」に「〔る〕」の注記]。しかも生意氣な所が毫もない。まことにゆかしい人である。只氣が弱いのが弱點である。
[#ここで字下げ終わり]
三六三
明治三十九年六月七日 (以下不明) 本郷區駒込千駄木町五十七番地より廣島市猿樂町鈴木三重吉へ
昨夜君の所へ手紙をかいた處今朝君のを受けとつたから書き直す原稿料は遠慮なく御受取可然。小生抔は始めからあてにして原稿をかきます
漾虚集の誤字誤植御親切に御教示を蒙り難有候。實は僕も訂正の積で一度よんで誤の多いので驚ろいた位人が見たら定めし見苦しき事なるべし御蔭にて僕の見落したる分を大分直す事が出來て結構だ。どうか序にあとも教へて下さい
君は九月上京の事と思ふ神經衰弱は全快の事なるべく結構に候然し現下の如き愚なる間違つたる世の中には正しき人でありさへすれば必ず神經衰弱になる事と存候。是から人に逢ふ度に君は神經衰弱かときいて然りと答へたら普通の徳義心ある人間と定める事に致さうと思つてゐる
今の世に神經衰弱に罹らぬ奴は金持ちの魯鈍ものか、無教育の無良心の徒か左
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