《へだ》てる。彼らはかくしてついに宿命の鬼の餌食《えじき》となる。明日《あす》食われるか明後日《あさって》食われるかあるいはまた十年の後《のち》に食われるか鬼よりほかに知るものはない。この門に横付《よこづけ》につく舟の中に坐している罪人の途中の心はどんなであったろう。櫂《かい》がしわる時、雫《しずく》が舟縁《ふなべり》に滴《した》たる時、漕《こ》ぐ人の手の動く時ごとに吾が命を刻まるるように思ったであろう。白き髯《ひげ》を胸まで垂れて寛《ゆる》やかに黒の法衣《ほうえ》を纏《まと》える人がよろめきながら舟から上る。これは大僧正クランマーである。青き頭巾《ずきん》を眉深《まぶか》に被《かぶ》り空色の絹の下に鎖《くさ》り帷子《かたびら》をつけた立派な男はワイアットであろう。これは会釈《えしゃく》もなく舷《ふなべり》から飛び上《あが》る。はなやかな鳥の毛を帽に挿《さ》して黄金《こがね》作りの太刀《たち》の柄《え》に左の手を懸《か》け、銀の留め金にて飾れる靴の爪先を、軽《かろ》げに石段の上に移すのはローリーか。余は暗きアーチの下を覗《のぞ》いて、向う側には石段を洗う波の光の見えはせぬかと首を延ばし
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