》の町から、相生村《あいおいむら》の方へ飛んでいった。大方観音様の境内《けいだい》へでも落ちたろう。
 式の時はさほどでもなかったが、今度は大変な人出だ。田舎にもこんなに人間が住んでるかと驚《おど》ろいたぐらいうじゃうじゃしている。利口《りこう》な顔はあまり見当らないが、数から云うとたしかに馬鹿に出来ない。そのうち評判の高知の何とか踴が始まった。踴というから藤間か何ぞのやる踴りかと早合点していたが、これは大間違いであった。
 いかめしい後鉢巻《うしろはちまき》をして、立《た》っ付《つ》け袴《ばかま》を穿《は》いた男が十人ばかりずつ、舞台の上に三列に並《なら》んで、その三十人がことごとく抜き身を携《さ》げているには魂消《たまげ》た。前列と後列の間はわずか一尺五寸ぐらいだろう、左右の間隔《かんかく》はそれより短いとも長くはない。たった一人列を離《はな》れて舞台の端《はし》に立ってるのがあるばかりだ。この仲間|外《はず》れの男は袴だけはつけているが、後鉢巻は倹約して、抜身の代りに、胸へ太鼓《たいこ》を懸《か》けている。太鼓は太神楽《だいかぐら》の太鼓と同じ物だ。この男がやがて、いやあ、はああ
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