なろうとも報酬はいよいよ減ずるのである。だによって労力の高下《こうげ》では報酬の多寡《たか》はきまらない。金銭の分配は支配されておらん。したがって金のあるものが高尚な労力をしたとは限らない。換言すれば金があるから人間が高尚だとは云えない。金を目安《めやす》にして人物の価値をきめる訳には行かない」
 滔々《とうとう》として述べて来た道也はちょっとここで切って、満場の形勢を観望した。活版に押した演説は生命がない。道也は相手しだいで、どうとも変わるつもりである。満場は思ったより静かである。
「それを金があるからと云うてむやみにえらがるのは間違っている。学者と喧嘩《けんか》する資格があると思ってるのも間違っている。気品のある人々に頭を下げさせるつもりでいるのも間違っている。――少しは考えても見るがいい。いくら金があっても病気の時は医者に降参しなければなるまい。金貨を煎《せん》じて飲む訳には行かない……」
 あまり熱心な滑稽《こっけい》なので、思わず噴き出したものが三四人ある。道也先生は気がついた。
「そうでしょう――金貨を煎《せん》じたって下痢《げり》はとまらないでしょう。――だから御医者に頭
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