有しておればこそ訳がわからないのである」
高柳君は胸の苦しみを忘れて、ひやひやと手を打った。隣の薩摩絣《さつまがすり》はえへんと嘲弄的《ちょうろうてき》な咳払《せきばらい》をする。
「社会上の地位は何できまると云えば――いろいろある。第一カルチュアーできまる場合もある。第二|門閥《もんばつ》できまる場合もある。第三には芸能できまる場合もある。最後に金できまる場合もある。しかしてこれはもっとも多い。かようにいろいろの標準があるのを混同して、金で相場がきまった男を学問で相場がきまった男と相互に通用し得るように考えている。ほとんど盲目《めくら》同然である」
エヘン、エヘンと云う声が散らばって五六ヵ所に起る。高柳君は口を結んで、鼻から呼吸《いき》をはずませている。
「金で相場のきまった男は金以外に融通は利《き》かぬはずである。金はある意味において貴重かも知れぬ。彼らはこの貴重なものを擁《よう》しているから世の尊敬を受ける。よろしい。そこまでは誰も異存はない。しかし金以外の領分において彼らは幅《はば》を利かし得る人間ではない、金以外の標準をもって社会上の地位を得る人の仲間入は出来ない。もしそ
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