である。自然は公平なもので一人の男に金ももうけさせる、同時にカルチュアーも授けると云うほど贔屓《ひいき》にはせんのである。この見やすき道理も弁《べん》ぜずして、かの金持ち共は己惚《うぬぼ》れて……」
「ひや、ひや」「焼くな」「しっ、しっ」だいぶ賑《にぎ》やかになる。
「自分達は社会の上流に位して一般から尊敬されているからして、世の中に自分ほど理窟《りくつ》に通じたものはない。学者だろうが、何だろうがおれに頭をさげねばならんと思うのは憫然《びんぜん》のしだいで、彼らがこんな考を起す事自身がカルチュアーのないと云う事実を証明している」
 高柳君の眼は輝やいた。血が双頬《そうきょう》に上《のぼ》ってくる。
「訳《わけ》のわからぬ彼らが己惚《うぬぼれ》はとうてい済度《さいど》すべからざる事とするも、天下社会から、彼らの己惚をもっともだと是認するに至っては愛想《あいそ》の尽きた不見識と云わねばならぬ。よく云う事だが、あの男もあのくらいな社会上の地位にあって相応の財産も所有している事だから万更そんな訳のわからない事もなかろう。豈計《あにはか》らんやある場合には、そんな社会上の地位を得て相当の財産を
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