しの笑声を好意の笑声で揉《も》み潰《つぶ》したのである。
「せんだって学問を専門にする人が来て、私《わたし》も妻《さい》をもろうて子が出来た。これから金を溜《た》めねばならぬ。是非共子供に立派な教育をさせるだけは今のうちに貯蓄して置かねばならん。しかしどうしたら貯蓄が出来るでしょうかと聞いた。
「どうしたら学問で金がとれるだろうと云う質問ほど馬鹿気た事はない。学問は学者になるものである。金になるものではない。学問をして金をとる工夫《くふう》を考えるのは北極へ行って虎狩をするようなものである」
満場はまたちょっとどよめいた。
「一般の世人は労力と金の関係について大《だい》なる誤謬《ごびゅう》を有している。彼らは相応の学問をすれば相応の金がとれる見込のあるものだと思う。そんな条理は成立する訳がない。学問は金に遠ざかる器械である。金がほしければ金を目的にする実業家とか商買人になるがいい。学者と町人とはまるで別途の人間であって、学者が金を予期して学問をするのは、町人が学問を目的にして丁稚《でっち》に住み込むようなものである」
「そうかなあ」と突飛《とっぴ》な声を出す奴《やつ》がいる。聴衆はど
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