みかん》の味はしらず、色こそ暖かい。小春《こはる》の色は黄である。点々と珠《たま》を綴《つづ》る杉の葉影に、ゆたかなる南海の風は通う。紫に明け渡る夜を待ちかねて、ぬっと出る旭日《あさひ》が、岡《おか》より岡を射《い》て、万顆《ばんか》の黄玉《こうぎょく》は一時に耀《かがや》く紀の国から、偸《ぬす》み来た香《かお》りと思われる。この下を通るものは酔わねば出る事を許されぬ掟《おきて》である。
 緑門《アーチ》の下には新しき夫婦が立っている。すべての夫婦は新らしくなければならぬ。新しき夫婦は美しくなければならぬ。新しく美しき夫婦は幸福でなければならぬ。彼らはこの緑門の下に立って、迎えたる賓客にわが幸福の一分《いちぶ》を与え、送り出す朋友《ほうゆう》にわが幸福の一分を与えて、残る幸福に共白髪《ともしらが》の長き末までを耽《ふけ》るべく、新らしいのである、また美くしいのである。
 男は黒き上着に縞《しま》の洋袴《ズボン》を穿《は》く。折々は雪を欺《あざむ》く白き手拭《ハンケチ》が黒き胸のあたりに漂《ただよ》う。女は紋つきである。裾《すそ》を色どる模様の華《はな》やかなるなかから浮き上がるがごとく
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