か」と道也先生横から覗《のぞ》き込む。高柳君の頬《ほお》は熱を帯びて、蒼《あお》い中から、ほてっている。道也は首を傾けた。
「君《きみ》坂を上がると呼吸《いき》が切れるようだが、どこか悪いじゃないですか」
 強《し》いて自分にさえ隠そうとする事を言いあてられると、言いあてられるほど、明白な事実であったかと落胆《がっかり》する。言いあてられた高柳君は暗い穴の中へ落ちた。人は知らず、かかる冷酷なる同情を加えて憚《はば》からぬが多い。
「先生」と高柳君は往来に立《た》ち留《ど》まった。
「何ですか」
「私は病人に見えるでしょうか」
「ええ、まあ、――少し顔色は悪いです」
「どうしても肺病でしょうか」
「肺病? そんな事はないです」
「いいえ、遠慮なく云って下さい」
「肺の気《け》でもあるんですか」
「遺伝です。おやじは肺病で死にました」
「それは……」と云ったが先生返答に窮した。
 膀胱《ぼうこう》にはち切れるばかり水を詰めたのを針ほどの穴に洩《も》らせば、針ほどの穴はすぐ白銅ほどになる。高柳君は道也の返答をきかぬがごとくに、しゃべってしまう。
「先生、私の歴史を聞いて下さいますか」
「ええ
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