「教えて上げましょうか」
「ええ教えて下さい」
「教えて上げるから笑っちゃいけませんよ」
「笑やしません。この通り真面目《まじめ》でさあ」
「この間ね、池上《いけがみ》に競馬があったでしょう。あの時父様があすこへいらしってね。そうして……」
「そうして、どうしたんです。――拾って来たんですか」
「あら、いやだ。あなたは失敬ね」
「だって、待っててもあとをおっしゃらないですもの」
「今云うところなのよ。そうして賭《かけ》をなすったんですって」
「こいつは驚ろいた。あなたの御父さんもやるんですか」
「いえ、やらないんだけれども、試《ため》しにやって見たんだって」
「やっぱりやったんじゃありませんか」
「やった事はやったの。それで御金を五百円ばかり御取りになったんだって」
「へえ。それで買って頂いたのですか」
「まあ、そうよ」
「ちょっと拝見」と手を出す。男は耀《かがや》くものを軽《かろ》く抑《おさ》えた。
指輪は魔物である。沙翁《さおう》は指輪を種に幾多の波瀾《はらん》を描いた。若い男と若い女を目に見えぬ空裏《くうり》に繋《つな》ぐものは恋である。恋をそのまま手にとらすものは指輪である
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