向きもしなかった。いかなるものが外から入って来ても、全く注意しなかった。彼らは活きた彫刻のように己《おの》れを持して、火の気のない室《へや》に粛然《しゅくぜん》と坐っていた。宗助の感覚には、山寺の寒さ以上に、一種|厳《おごそ》かな気が加わった。
やがて寂寞《せきばく》の中《うち》に、人の足音が聞えた。初は微《かす》かに響いたが、しだいに強く床《ゆか》を踏んで、宗助の坐っている方へ近づいて来た。しまいに一人の僧が廊下口からぬっと現れた。そうして宗助の傍《そば》を通って、黙って外の暗がりへ抜けて行った。すると遠くの奥の方で鈴《れい》を振る音がした。
この時宗助と並んで厳粛《げんしゅく》に控えていた男のうちで、小倉《こくら》の袴《はかま》を着けた一人が、やはり無言のまま立ち上がって、室の隅《すみ》の廊下口の真正面へ来て着座した。そこには高さ二尺幅一尺ほどの木の枠《わく》の中に、銅鑼《どら》のような形をした、銅鑼よりも、ずっと重くて厚そうなものがかかっていた。色は蒼黒《あおぐろ》く貧しい灯《ひ》に照らされていた。袴を着けた男は、台の上にある撞木《しゅもく》を取り上げて、銅鑼に似た鐘の真中を
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