は好いでしょう」と云ったので、相談はほぼその座で纏《まと》まった。
 宗助はそこで辞して帰ればよかったのである。また辞して帰ろうとしたのである。ところが主人からまあ緩《ゆっ》くりなさいと云って留められた。主人は夜は長い、まだ宵《よい》だと云って時計まで出して見せた。実際彼は退屈らしかった。宗助も帰ればただ寝るよりほかに用のない身体《からだ》なので、ついまた尻を据《す》えて、濃い煙草《たばこ》を新らしく吹かし始めた。しまいには主人の例に傚《なら》って、柔らかい座蒲団《ざぶとん》の上で膝《ひざ》さえ崩《くず》した。
 主人は小六の事に関聯して、
「いや弟《おとと》などを有っていると、随分|厄介《やっかい》なものですよ。私《わたくし》も一人やくざなのを世話をした覚がありますがね」と云って、自分の弟が大学にいるとき金のかかった事などを、自分が学生時代の質朴《しつぼく》さに比べていろいろ話した。宗助はこの派出好《はでずき》な弟が、その後どんな径路を取って、どう発展したかを、気味の悪い運命の意思を窺《うかが》う一端として、主人に聞いて見た。主人は卒然
「冒険者《アドヴェンチュアラー》」と、頭も尾《
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